出産を終えて、少しずつ赤ちゃんとの生活に慣れてきたころ。ふと鏡を見ると、お腹はまだぽっこり、姿勢も前かがみ。抱っこや授乳で、肩や腰はいつもガチガチ。「そろそろ体を整えたい」「ピラティスがいいって聞いたけど、いつから始めていいの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
産後の体は、妊娠・出産という大きな変化を経て、見た目以上に回復の途中にあります。だからこそ、始める時期と始め方がとても大切です。
今日は、産後にピラティスを始める前に確認したいことと、産後の体にやさしい始め方をお伝えします。
※産後の体の状態は一人ひとり大きく異なります。運動を始める時期や内容については、必ず産後健診などで医師や助産師に相談し、許可を得てから始めてください。帝王切開や、出産時のトラブルがあった方は特に慎重に。この記事は一般的な情報であり、医療的な判断に代わるものではありません。
産後の体に起きていること
お腹まわりの筋肉がのびている
妊娠中、大きくなるお腹を支えるために、お腹まわりの筋肉はのびた状態になります。出産後すぐに元に戻るわけではなく、回復には時間がかかります。
骨盤まわりが不安定になりやすい
妊娠・出産では、骨盤まわりの関節や靭帯がゆるみやすくなると言われています。また、骨盤の底で内臓を支える筋肉(骨盤底筋)も、出産で大きな負担を受けています。
抱っこ・授乳で姿勢がくずれやすい
1日に何度も繰り返す抱っこや授乳で、背中が丸まり、肩が前に出る姿勢が続きやすくなります。肩こりや腰の痛みを感じる人も少なくありません。
産後ピラティスを始める前に確認したいこと

- 医師・助産師の許可を得ているか:産後健診で、運動を始めてよいか確認しましょう。
- 出血や痛みが落ち着いているか:悪露(おろ)が続いている、傷が痛むなどの場合は、まだ無理をしない時期です。
- 尿もれや、下腹部の違和感がないか:骨盤底筋の回復が十分でないサインのこともあります。気になる場合は医師に相談を。
- お腹の真ん中のすき間(腹直筋離開)が気になる場合:お腹を縦に走る筋肉の間が広がっている状態のことで、腹筋運動のやり方に注意が必要です。専門家に確認しましょう。
- 睡眠不足や疲れがひどくないか:産後は慢性的な睡眠不足になりがちです。体調がすぐれない日は、休むことを優先しましょう。
産後の体にやさしいピラティス4つ

※医師の許可を得たうえで、痛みや違和感があればすぐに中止してください。
1. 呼吸(あお向けで)
あお向けでひざを立て、手をお腹と肋骨に置きます。鼻から息を吸って肋骨を横に広げ、口からゆっくり息を吐きながら、お腹がやさしく薄くなるのを感じます。5〜10回。産後のピラティスは、まず呼吸から始めるのが基本です。
2. 骨盤底のやさしい意識づけ
呼吸に合わせて、息を吐くときに骨盤の底をやさしく引き上げるイメージを持ちます。強く締めるのではなく、「ふわっと持ち上げる」程度で十分です。吸うときは、しっかりゆるめます。5回。
3. 骨盤の小さなロッキング
あお向けでひざを立て、骨盤をごく小さく前後に傾ける動きを、呼吸に合わせてゆっくり行います。8回。腰まわりのこわばりをやさしくほぐします。
4. 胸を開くストレッチ(座って)
椅子に座り、両手を後ろで組むか、腰に当てて、息を吸いながら胸をやさしく開きます。吐きながら戻します。5回。抱っこや授乳で丸まりがちな背中と肩をリセットします。
産後のピラティスで避けたいこと
- 上体を勢いよく起こす腹筋運動:お腹に強い圧がかかる動きは、回復途中の体には負担になることがあります。
- 息を止めて力む動き:お腹や骨盤の底に圧がかかりやすくなります。
- 痛みや違和感をがまんして続けること:違和感があれば、すぐに中止してください。
- 「早く元に戻さなきゃ」と焦ること:回復のペースは人それぞれです。
「戻す」より「取り戻す」
産後の体について、「元に戻す」という言葉がよく使われます。でも、妊娠・出産という大きな経験をした体は、以前とまったく同じ体に戻るわけではありません。そして、それは悪いことではありません。
産後のピラティスで目指したいのは、以前の体の形に戻すことより、自分の体を思いどおりに動かせる感覚を「取り戻す」ことだと思います。抱っこしても腰が痛くならない。赤ちゃんを床から抱き上げるときに、ふらつかない。そんな、毎日の育児をラクにする体の使い方を取り戻すことが、産後ピラティスの大切な目的です。
そして、ピラティスの時間は、自分の体と静かに向き合う数分間でもあります。赤ちゃん中心の毎日の中で、自分の呼吸に意識を向ける時間は、心を落ち着かせてくれる時間にもなります。完璧にやろうとせず、できる日に、できる分だけ。それで十分です。
抱っこ・授乳のときに意識したい姿勢
産後の体の負担は、エクササイズの時間より、1日に何十回も繰り返す抱っこや授乳の姿勢から生まれることが多いものです。ピラティスの考え方を、育児の動作にも生かしてみましょう。
- 抱き上げるとき:腰だけを曲げず、ひざを曲げて赤ちゃんに体を近づけてから、息を吐きながら持ち上げます。
- 抱っこしているとき:片方の腰を突き出して支えるくせがあると、骨盤まわりに偏った負担がかかります。ときどき左右を入れ替えましょう。
- 授乳のとき:背中が丸まりすぎないよう、クッションなどで赤ちゃんの高さを調整し、肩の力を抜きます。
エクササイズの時間がとれない日でも、毎日の動作の中で体をいたわることはできます。それも、立派な産後ケアです。
よくある質問
Q. 産後いつから始められますか?
出産の状況や体の回復具合によって大きく異なるため、一律に「いつから」とは言えません。必ず産後健診などで医師や助産師に相談してから始めてください。
Q. 赤ちゃんと一緒にできますか?
赤ちゃんがお昼寝している間や、そばで寝転んでいる間に、呼吸のエクササイズから始めるのがおすすめです。赤ちゃんの様子を見ながら、無理のない範囲で行いましょう。
Q. 尿もれが気になります。ピラティスで改善しますか?
骨盤底筋を意識するエクササイズが役立つこともありますが、まずは医師に相談することをおすすめします。原因によって、適切な対処法が異なるためです。
Q. スタジオに通うべき?
産後向けのクラスがあるスタジオや、産後の体に詳しいインストラクターのもとで始めると安心です。自宅で行う場合も、呼吸など負担の少ない動きから始めましょう。
まとめ:産後ピラティスは「呼吸から、ゆるやかに」
- 産後の体は、お腹・骨盤まわり・姿勢が回復の途中にある
- 始める前に、必ず医師・助産師に相談し、体の状態を確認する
- 呼吸、骨盤底の意識づけ、小さな骨盤の動き、胸を開くストレッチから始める
- 強い腹筋運動、息を止める動き、痛みのがまんは避ける
- 目指すのは「元に戻す」より、育児をラクにする体の使い方を「取り戻す」こと
まずは、次の産後健診で「運動を始めてもいいですか?」と聞いてみてください。許可が出たら、赤ちゃんのお昼寝の時間に、ゆっくりした呼吸から始めてみましょう。
