背中で両手を組もうとしても、指先が届かない。肩甲骨のまわりが、いつも板のように固い。背中を触ってみても、肩甲骨の形がよくわからない——。
肩甲骨は、背中の上のほうにある、左右一対の三角形の骨です。本来は、腕を動かすたびに、上下左右に大きく動く骨です。ところが、毎日の生活のくせで、この動きが小さくなってしまうことがあります。
今日は、肩甲骨が動きにくくなる理由と、背中をほぐして肩甲骨を動かすピラティスをお伝えします。結論から言うと、肩甲骨は「固まっている」というより、「動かす機会がない」ことで動きが小さくなっていることが多いのです。
※肩や腕に強い痛みやしびれがある場合、腕が上がらない場合は、医療機関に相談してください。ここでお話しするのは、体の動きを整えるためのセルフケアです。
肩甲骨は「浮いている」骨
肩甲骨は、ほかの骨としっかり関節でつながっている部分が少なく、多くの筋肉に支えられて、背中の上に浮かぶように位置しています。そのため、とても自由に動くことができる骨です。
腕を上に上げるとき、肩甲骨も一緒に上を向くように回転します。腕を前に伸ばすときは外側へ、後ろに引くときは背骨のほうへ。腕のスムーズな動きは、肩甲骨の動きに支えられているのです。
反対に、肩甲骨の動きが小さくなると、腕を動かすときに肩や首の筋肉ががんばらなければいけなくなり、肩こりや首の疲れにつながることもあります。
肩甲骨が動きにくくなる3つの理由

1. 腕を「体の前」でしか使わない
スマホ、パソコン、料理、運転。日常生活のほとんどの動きは、腕を体の前で使う動きです。腕を大きく上げたり、後ろに引いたりする機会は、意外と少ないものです。使わない動きは、少しずつ小さくなっていきます。
2. 背中が丸い姿勢が続く
背中が丸まった姿勢では、肩甲骨が外側に開き、背中に貼りついたような状態になりやすくなります。この姿勢が長く続くと、肩甲骨のまわりの筋肉が固まり、動きにくくなります。
3. 呼吸が浅い
呼吸をするとき、肋骨は広がったり縮んだりします。肩甲骨は肋骨の上にあるので、呼吸が浅く、肋骨があまり動かないと、肩甲骨の動きも小さくなりがちです。
肩甲骨の動きをセルフチェック
- 背中で両手を組めない(上下どちらの組み方でも)
- 腕を真上に上げると、耳の横まで届かない
- 腕を上げると、肩がすくむ
- 肩を回すと、ゴリゴリと音がする感じがある
- 背中を触っても、肩甲骨の形がわかりにくい
いくつか当てはまるなら、肩甲骨の動きが小さくなっているかもしれません。
肩甲骨を動かすピラティス5つ

1. 肩甲骨の上げ下げ(座って)
椅子に座り、息を吸いながら両肩をすくめるように上げ、吐きながらストンと下ろし、さらに背中のほうへ引き下げます。5回くり返します。肩甲骨が上下に動く感覚をつかみます。
2. 肩甲骨の寄せ・開き(四つ這い)
四つ這いになり、ひじを伸ばしたまま、胸を床に近づけるように肩甲骨を寄せ、次に床を押して背中を丸くするように肩甲骨を開きます。ひじは曲げず、肩甲骨だけを動かします。8回ほど。
3. アームサークル(あお向け)
あお向けに寝て、両腕を天井に向けて伸ばします。息を吸いながら腕を頭の上へ、吐きながら横から体の横へ、大きな円を描くように回します。腰が反らないように注意しながら、5回ずつ逆回しも行います。
4. オープンブック(横向き)
横向きに寝て、両腕を前にそろえて伸ばします。上の腕を天井から後ろへ、胸を開くように大きく開いていきます。目線は手を追います。左右5回ずつ。
5. スワンの準備(うつ伏せ)
うつ伏せで手を肩の横に置き、肩甲骨を背中のほうへ引き下げながら、胸の上のほうを少し浮かせます。腰ではなく背中の上のほうを使う意識で。5回ほど。
どの動きも、痛みのない範囲で、呼吸を止めずに行ってください。大きく動かすことより、肩甲骨が動いている感覚を大切にしましょう。
毎日の中で肩甲骨を動かす工夫
- 高いところの物を取るとき:腕だけで伸ばすのではなく、肩甲骨から腕を伸ばすように意識します。
- デスクワークの合間に:1時間に1回、両腕を大きく後ろに回してみます。
- 歩くとき:腕を前だけでなく、後ろにも振るように意識すると、肩甲骨が自然に動きます。
「ほぐす」より「動かす」が大切な理由
肩甲骨のまわりが固いと、マッサージでほぐしたくなります。もちろん、ほぐすと一時的に楽になることもあります。でも、動かす習慣がないままだと、すぐに元の固さに戻ってしまうことが多いのです。
肩甲骨は、動かすことで動くようになる骨です。毎日少しずつ、いろいろな方向に動かす。それが、肩甲骨のまわりを柔らかく保ついちばんの方法です。ピラティスの動きは、まさにそのための練習です。
そして、肩甲骨が動くようになると、腕を上げる動き、背すじを伸ばす姿勢、深い呼吸まで、体のさまざまな動きが楽になっていきます。
肩甲骨と呼吸のつながり
肩甲骨を動かすピラティスを行うときは、呼吸との組み合わせを意識すると、より効果的です。
肩甲骨は肋骨の上にあるので、息を吸って肋骨が広がると、肩甲骨のまわりも自然に広がります。反対に、息を吐くと肋骨が縮み、肩甲骨も背中に沿って落ち着きます。つまり、深い呼吸そのものが、肩甲骨を動かす運動になっているのです。
試しに、椅子に座って、背中に息を入れるようなイメージで、ゆっくり大きく息を吸ってみてください。背中の肩甲骨のあたりが、内側からふくらむような感覚があるでしょうか。この「背中で呼吸する」感覚がつかめると、肩甲骨のまわりの固さが少しずつほどけていきます。
肩甲骨を動かす動きと、背中に息を入れる呼吸。この2つを組み合わせることで、背中全体が軽くなっていくのを感じられるはずです。
よくある質問
Q. 肩甲骨はがしという言葉を聞きますが?
肩甲骨が実際に体から「はがれる」わけではなく、肩甲骨のまわりの筋肉をほぐして動きをよくすることを表した言葉です。強い力で無理に動かすのではなく、自分で動かす練習を大切にしましょう。
Q. 背中で手が組めるようになりますか?
体の動きには個人差があります。手が組めることを目標にするより、肩や首が楽になることを目安に続けてみてください。
Q. 五十肩との違いは?
腕を上げると痛む、夜に痛みがある、といった場合は、自己判断せずに医療機関で相談してください。
Q. 肩甲骨を動かすと音が鳴ります。
痛みがなければ、多くの場合は心配いりません。ただ、痛みをともなう場合や、動かしにくさが強い場合は、無理に動かさず、医療機関で相談してください。動きは小さな範囲から始めましょう。
まとめ:肩甲骨は動かすことで動くようになる
- 肩甲骨は多くの筋肉に支えられて浮かぶように位置する、自由に動く骨
- 腕を前でしか使わない、丸い背中、浅い呼吸で動きが小さくなる
- 上げ下げ、寄せ・開き、アームサークル、オープンブック、スワンの準備で動かす
- 高い物を取る、腕を後ろに回す、歩くときに腕を振るなど日常でも動かす
- ほぐすより、毎日いろいろな方向に動かすことが大切
今日、デスクワークの合間に、両肩をすくめてストンと下ろす動きを5回してみてください。肩甲骨が動き出す感覚が、背中を軽くする最初の一歩です。
