靴下をはこうと片脚で立ったら、ぐらっとよろけた。電車で急ブレーキがかかったとき、思わず手すりにしがみついた。何もないところでつまずくことが増えた——。
「最近、ちょっとふらつくな」と感じたら、それは体のバランス力が少しずつ変わってきたサインかもしれません。バランス力は、年齢とともに少しずつ落ちていくと言われますが、使い続けることで育てることもできる力です。
今日は、バランス力がなぜ変わるのか、ピラティスでバランス力を育てる方法、そして毎日の生活でできる工夫をお伝えします。
※めまいがある、急にふらつきが増えたなど、気になる症状がある場合は、医療機関に相談してください。また、エクササイズは転倒しないよう、壁や椅子のそばで行いましょう。
バランス力を支える3つの力
1. 足裏で感じる力
立っているとき、私たちは足の裏で地面の感触や体重のかかり方を感じとり、無意識にバランスを調整しています。クッション性の高い靴ばかり履いていたり、足裏をあまり使わなかったりすると、この感覚が鈍くなることがあります。
2. 体の中心で支える力
体が傾いたとき、お腹や背中、お尻の筋肉が働いて、体を元の位置に戻します。体の中心(体幹)が安定していると、手足を動かしても体がぶれにくくなります。
3. 体の位置を感じとる力
目を閉じても、自分の手や足がどこにあるかわかりますよね。この体の位置や動きを感じとる感覚も、バランスに大きく関わっています。
あなたのバランス力をセルフチェック
壁や椅子のそばで、安全に行ってください。
- 目を開けたまま、片脚で立ってみる。ふらつかずに立てる時間は?
- 左右で、立てる時間に差はある?
- 片脚で立ったとき、足首がぐらぐらする?それとも体全体が傾く?
左右差が大きい、足首がぐらぐらする、といった特徴に気づくだけでも、自分の体のくせを知るヒントになります。
バランス力を育てるピラティス5つ

1. 足指グーパー(座って)
椅子に座り、素足で足の指をグーにしてぎゅっと握り、パーに大きく開くを繰り返します。10回。足裏の感覚を目覚めさせ、立つための土台を整えます。
2. かかと上げ(壁に手を添えて)
壁に手を添えて立ち、息を吐きながらゆっくりかかとを上げ、吸いながらゆっくり下ろします。10回。足首まわりの安定性を高めます。
3. ニュートラルでの片脚立ち
椅子の背に手を添えて立ち、骨盤をまっすぐに保ったまま、片脚を少しだけ床から浮かせます。5〜10秒キープして、左右交互に3回ずつ。体が傾かないよう、お腹とお尻を軽く使います。慣れたら、手を離してみましょう。
4. 四つんばいで手脚を伸ばす(バードドッグ)
四つんばいになり、息を吐きながら右手と左脚を同時にまっすぐ伸ばします。吸って戻し、反対側も。左右5回ずつ。背中が傾かないように、体の中心で支える力を育てます。
5. 片脚立ちでの小さな動き
片脚立ちに慣れてきたら、浮かせた脚をゆっくり前・横・後ろに少しずつ動かしてみます。各方向3回ずつ。支えている脚と体の中心で、バランスを保つ練習になります。
毎日の生活でバランス力を育てる工夫

- 歯みがき中のかかと上げ:洗面台に手を添えて、ゆっくりかかとを上げ下げ。
- 靴下は立ってはく(安全な場所で):壁のそばで、片脚立ちの練習に。不安な場合は座ってはきましょう。
- 家の中で素足で過ごす時間をつくる:足裏の感覚を目覚めさせます。床がすべりやすい場合は注意。
- 階段はゆっくり、手すりを使いながら:足の運びを意識して上り下りします。
- よく歩く:散歩や買い物の歩きも、バランス力を使う大切な時間です。
なぜバランス力は「使い続ける」ことで育つのか
バランス力が落ちる理由のひとつは、バランスを使う場面が減ることだと考えられています。平らな道、エレベーター、クッション性の高い靴。便利な生活は、体がバランスをとる機会を少しずつ減らしていきます。
使わない感覚や筋肉は、少しずつ働きにくくなります。反対に、使えば使うほど、体は応えてくれます。バランス力は、特別なトレーニングで手に入れるものではなく、毎日少しずつ使い続けることで保たれ、育っていく力なのです。
ピラティスは、体の中心で支える力、体の位置を感じとる力を、ゆっくりした動きの中で丁寧に育てていきます。40代からのピラティスは、見た目を整えるためだけでなく、10年後、20年後も、自分の脚で軽やかに歩き続けるための準備でもあるのだと思います。
よくある間違い:バランスを「力」でとろうとする
片脚立ちでふらつくと、倒れないように全身に力を入れて踏ん張りたくなります。でも、全身をガチガチに固めると、体は小さな傾きに合わせて調整することができなくなり、かえってぐらつきやすくなります。
バランスがとれている状態とは、実は止まっているのではなく、小さく調整し続けている状態です。足の裏、足首、お腹、お尻が、少しずつ動きながら体の中心を保っています。
片脚立ちのときは、肩の力を抜き、呼吸を止めず、足の裏で床を感じながら、小さな揺れを許すことを意識してみてください。踏ん張るより、ゆるやかに調整し続けるほうが、結果的に長く安定して立てるようになります。
家の中のつまずきを減らす工夫
バランス力を育てると同時に、つまずきやすい環境を減らすことも大切です。床に置いたままのコード、めくれたラグの端、暗い廊下。家の中には、思わぬつまずきの原因が隠れています。足元を片付け、夜間は足元灯をつけるなど、環境を整えることも、ふらつきから体を守る大切な工夫です。
よくある質問
Q. 片脚立ちは何秒できればいいですか?
秒数よりも、左右差が小さくなること、ふらつきが減ることを目安にしましょう。昨日の自分と比べることが大切です。
Q. 毎日やったほうがいい?
バランスのエクササイズは、短い時間でも毎日続けるほうが効果を感じやすいと言われます。歯みがき中など、生活の中に組み込むと続けやすくなります。
Q. 目を閉じてやったほうが効果がありますか?
目を閉じると難しくなりますが、転倒の危険も高まります。目を開けた状態で安定してできるようになってから、壁のそばで、ごく短い時間から試してください。
Q. 靴選びも大切ですか?
かかとが安定し、足に合った靴を選ぶことは、バランスのためにも大切です。サイズが合わない靴や、かかとがぐらつく靴は、つまずきの原因になることがあります。
まとめ:バランス力は「使い続けて育てる」
- バランス力は、足裏の感覚、体の中心の支え、体の位置を感じる力で成り立つ
- 足指グーパー、かかと上げ、片脚立ち、バードドッグで育てる
- 歯みがき中のかかと上げなど、生活の中で使い続ける
- 便利な生活はバランスを使う機会を減らす。だからこそ意識して使う
- 40代からのピラティスは、10年後も軽やかに歩くための準備
今夜の歯みがきの時間に、洗面台に手を添えて、ゆっくりかかとを10回上げ下げしてみてください。毎日の小さな積み重ねが、ふらつかない体を育ててくれます。
