横から写った写真を見て、首が前に突き出ていることに気づいた。スマホを見ていると、首の後ろが重くなってくる。夕方になると、肩から首にかけてがガチガチになる——。
スマホやパソコンを長時間見る生活が当たり前になり、頭が体より前に出た姿勢になっている人は少なくありません。いわゆる「スマホ首」と呼ばれる状態です。
首が前に出ていると気づくと、多くの人は「首をまっすぐにしよう」と、あごを引いたり、首を後ろに引いたりします。でも、それだけではなかなか元に戻りません。なぜなら、首の位置は、首だけでなく、背中や胸の状態に大きく左右されているからです。
今日は、首が前に出てしまう理由と、背中と胸から整えるピラティス、そして毎日の見直し方をお伝えします。
※首や腕にしびれや強い痛みがある場合、めまいがある場合は、医療機関に相談してください。ここでお話しするのは、姿勢を整えるためのセルフケアです。
頭の重さと首の負担
人の頭は、体重の1割ほどの重さがあると言われます。体重50キロの人なら、5キロほど。ボウリングの球ほどの重さです。
この重い頭が、体の真上にあるときは、首や背中の筋肉は比較的楽に頭を支えられます。ところが、頭が前に出ると、首の後ろの筋肉は、前に倒れようとする頭を引っ張り続けなければいけません。頭が前に出るほど、首にかかる負担は大きくなると言われています。
首の後ろが重い、こる、という感覚は、頭を支えるために首の筋肉ががんばり続けているサインなのかもしれません。
首が前に出てしまう3つの理由

1. 背中が丸まっている
背中の上のほうが丸まると、その上にある首と頭は、前に押し出されるような位置になります。背中が丸いまま首だけまっすぐにしようとしても、うまくいかないのはこのためです。
2. 胸の前が縮こまっている
スマホやパソコンを使うとき、腕は体の前にあり、肩は内側に入りやすくなります。この姿勢が続くと、胸の前の筋肉が縮こまり、肩と背中を前に引っ張るようになります。その結果、首も前に出やすくなります。
3. 画面をのぞき込むくせ
スマホを胸やお腹の高さで持つと、画面を見るために頭を下げ、前に突き出す姿勢になります。この姿勢を1日に何時間も続けていると、体はその位置を「いつもの位置」として覚えてしまいます。
首の位置をセルフチェック
壁を背にして、かかと、お尻、背中を壁につけて立ってみてください。
- 後頭部が自然に壁につくか
- 後頭部をつけようとすると、あごが上がってしまうか
- 後頭部をつけたとき、首や背中に強い緊張を感じるか
後頭部が壁につきにくい、つけるとあごが上がる、という場合は、頭が前に出る姿勢がくせになっている可能性があります。無理に壁につけようとせず、今の状態を知る目安として使ってください。
首の位置を整えるピラティス4つ

1. チンタック(あお向け)
あお向けに寝て、ひざを立てます。後頭部を床につけたまま、あごを軽く引いて、首の後ろを長くするように、ほんの少しうなずきます。力いっぱい押しつけるのではなく、首の前の奥の筋肉が働く感覚を探します。5秒キープを5回。
2. 胸を開くオープンブック
横向きに寝て、両腕を前にそろえて伸ばします。息を吸って、上の腕を天井から後ろへ、本を開くように胸を開いていきます。目線は手を追いかけます。息を吐きながら戻します。左右5回ずつ。
3. スワンの準備(うつ伏せ)
うつ伏せになり、手を肩の横に置きます。息を吸いながら、首を長く保ったまま、胸の上のほうを少しだけ床から浮かせます。腰を反らすのではなく、背中の上のほうを使う意識で。息を吐きながら戻します。5回ほど。
4. 座ってできる肩甲骨の引き下げ
椅子に座り、背すじを伸ばします。肩をすくめるように一度持ち上げてから、肩甲骨を背中のポケットに入れるように、後ろへ下げていきます。首が長くなる感覚を味わいましょう。仕事の合間にも取り入れやすい動きです。
毎日の見直し方
スマホは「目の高さ」に近づける
スマホを見るときは、画面を目の高さに近づけるように持ちます。ひじを体に添えたり、反対の手で支えたりすると、腕が疲れにくくなります。
パソコンの画面の高さを見直す
ノートパソコンを使うときは、画面が低くなりやすいものです。台を使って画面を上げる、外付けのキーボードを使うなどの工夫で、頭を下げる時間を減らせます。
「30分に1回」顔を上げる
同じ姿勢を長く続けないことも大切です。30分に1回は画面から目を離し、胸を開いて深呼吸をする習慣をつけてみてください。
なぜ「首を引く」だけでは戻らないのか
首が前に出ていると気づいたとき、首だけを後ろに引こうとすると、あごが上がったり、首の後ろがつまったりすることがあります。土台である背中が丸まったままだからです。
家にたとえると、首は2階、背中は1階のようなものです。1階が傾いていれば、2階だけをまっすぐにすることはできません。背中と胸を整え、土台を整えると、首は自然に正しい位置に戻りやすくなる。ピラティスで背中と胸を動かすのは、このためです。
首を楽にする「休み方」も大切
首が前に出る姿勢を整えるには、動かすことと同じくらい、首を休ませる時間も大切です。
おすすめは、あお向けに寝て、頭の重さを床にあずける時間をつくることです。1日中頭を支え続けている首の筋肉にとって、頭の重さから解放される時間は、何よりの休息になります。後頭部の下に薄くたたんだタオルを敷き、あごが上がりすぎない高さに調整しましょう。
そのまま、ゆっくりと深い呼吸を5回。息を吐くたびに、首の後ろや肩の力が床に溶けていくようなイメージを持ちます。仕事の合間や寝る前に取り入れると、首まわりの緊張がやわらぎ、ピラティスの動きも行いやすくなります。
また、長時間スマホを見たあとは、遠くの景色を眺めて目を休めるのもよい習慣です。目の疲れと首の疲れは、つながっていることが多いものです。
よくある質問
Q. 枕は関係ありますか?
枕の高さが合っていないと、寝ている間も首に負担がかかることがあります。寝ていて首や肩が楽に感じられる高さを目安に見直してみてください。
Q. どのくらい続ければいい?
姿勢のくせは、長い時間をかけてできたものです。毎日少しずつ続けることで、体は新しい位置を覚えていきます。
Q. 首を回すストレッチはしてもいい?
勢いよく首を回すと、首に負担がかかることがあります。ゆっくり、痛みのない範囲で動かすようにしましょう。
Q. 首を鳴らすくせがあります。
首をポキポキ鳴らすと一時的にすっきりした感じがしますが、勢いよくひねる動きは首に負担をかけることがあります。鳴らしたくなったら、代わりにゆっくり胸を開く動きや、あお向けで頭の重さをあずける休息を試してみてください。
まとめ:首の位置は背中と胸から整える
- 頭が前に出ると、首の後ろの筋肉に大きな負担がかかる
- 背中の丸まり、胸の縮こまり、画面をのぞき込むくせが主な理由
- チンタック、オープンブック、スワンの準備、肩甲骨の引き下げで整える
- スマホやパソコンの画面の高さを見直し、30分に1回顔を上げる
- 首だけ引くのではなく、土台の背中と胸から整える
今日、スマホを見るときに、画面を目の高さまで上げてみてください。それだけで、首の後ろが少し楽になるのを感じられるはずです。

