鏡の前に立つと、片方の肩だけが下がっている。スカートがいつも同じ方向に回ってしまう。片脚立ちをすると、右と左でふらつき方がまったく違う——。
体の左右差に気づくと、「体がゆがんでいるのでは」と心配になる人も多いかもしれません。でも、実は人の体には、もともとある程度の左右差があるものです。心臓や肝臓の位置が左右で違うように、体はもともと完全な左右対称ではありません。
今日は、体の左右差が生まれる理由と、左右のバランスを整えるピラティスをお伝えします。結論から言うと、大切なのは左右差をゼロにすることではありません。差が大きくなりすぎないように、生活のくせに気づき、両側をバランスよく使うことです。
※痛みやしびれがある場合、左右差が急に大きくなった場合は、医療機関に相談してください。ここでお話しするのは、体の使い方を整えるためのセルフケアです。
左右差は「使い方」の記録
利き手があるように、私たちは毎日、体の左右を同じようには使っていません。いつも同じ手でバッグを持ち、同じ脚を上にして組み、同じ側で頬杖をつく。こうした小さなくせが、何年も積み重なると、筋肉の働き方や柔軟性に差が生まれていきます。
つまり、体の左右差は、これまでの体の使い方の記録のようなものです。記録を消すことはできませんが、これからの使い方を少し変えることで、差が広がりすぎるのを防ぐことはできます。
左右差が生まれる3つの生活のくせ

1. いつも同じ側で荷物を持つ
バッグを片方の肩にかける、子どもを同じ側で抱っこする。重さがいつも片側にかかると、体はバランスを取るために反対側に傾き、肩の高さや背骨のカーブに差が出やすくなります。
2. 片脚に体重をかけて立つ
立っているとき、いつも同じ脚に体重をかけていませんか。体重をかけている側の骨盤が上がり、反対側が下がる状態が続くと、骨盤まわりの筋肉の使い方に差が出てきます。
3. 同じ脚を上にして組む・同じ方向に横座りする
脚を組むとき、横座りをするとき、多くの人は決まった方向があります。毎回同じ方向にねじる姿勢は、骨盤や背骨の動きにくせをつけやすくなります。
左右差をセルフチェック
- 片脚立ち:右と左で、立っていられる時間やふらつき方を比べます。
- 肩の高さ:鏡の前で、肩の高さが左右でどのくらい違うかを見ます。
- 体のねじり:椅子に座って上半身を左右にねじり、回りやすさを比べます。
- あお向けの足の向き:力を抜いてあお向けになったとき、つま先の開き方が左右で違うかを見ます。
左右差があっても、心配しすぎる必要はありません。自分の体のくせを知ることが、整える第一歩です。
左右差を整えるピラティス4つ

1. サイドライイング・レッグリフト(横向き)
横向きに寝て、下の腕を枕にします。上の脚をまっすぐ伸ばし、腰の位置を変えずに、ゆっくり持ち上げて下ろします。8回ずつ左右で行い、上げやすさの違いを感じてみましょう。
2. 座ってのスパインツイスト
床か椅子に座り、背すじを伸ばします。息を吐きながら上半身を片側へねじり、吸いながら正面に戻します。左右交互に5回ずつ。ねじりにくい側は、無理をせず、少しずつ動かします。
3. 片脚ブリッジ
あお向けでひざを立て、お尻を持ち上げます。その姿勢から片脚を伸ばして、骨盤を水平に保ちます。骨盤が傾かないように意識しながら3呼吸キープ。左右で行います。
4. 四つ這いで手脚を伸ばす
四つ這いから、右手と左脚を同時に伸ばし、体を一直線に保ちます。3呼吸キープして戻し、反対側も行います。左右5回ずつ。
ポイントは、やりにくい側を少し丁寧に、多めに行うことです。ただし、無理に動かすのではなく、体の声を聞きながら進めましょう。
毎日のくせを少しだけ変える
- バッグは左右交互に持つ:数日ごと、あるいは移動のたびに持ちかえてみます。リュックを使うのもよい方法です。
- 立つときは両足に均等に:信号待ちや電車の中で、両足に体重をのせているか確かめます。
- 脚を組むなら、反対も:脚を組むくせがやめられないときは、反対側でも組むようにします。
- 横座りの向きを変える:床に座るときの横座りの向きを、ときどき反対にします。
なぜ「完全な左右対称」を目指さなくていいのか
左右差に気づくと、きっちりそろえたくなるかもしれません。でも、人の体はもともと左右非対称であり、多少の差があるのは自然なことです。
大切なのは、差が大きくなりすぎて、痛みや動きにくさにつながらないようにすることです。そのためには、強い力で無理にそろえるより、両側をバランスよく使う習慣をつくるほうが、体にやさしく、長続きします。
ピラティスで左右を比べながら動くと、自分の体のくせに自然と気づけるようになります。気づくことが、変わることの始まりです。
左右差に気づくための「観察の時間」
左右差を整えるうえで、意外と大切なのが自分の体を観察する時間です。
ピラティスの動きを左右で行うとき、ただ回数をこなすのではなく、「右と左で何が違うか」を感じながら動いてみてください。右は脚が高く上がるけれど、左は腰が浮きやすい。右にはねじりやすいけれど、左はつまる感じがする。こうした違いに気づくことが、体のくせを知る大切な手がかりになります。
気づいた違いは、簡単にメモしておくのもおすすめです。「左の片脚立ちがふらつく」「右にねじりにくい」。数週間後に見返すと、少しずつ差が小さくなっていることに気づくかもしれません。その変化が、続ける励みにもなります。
また、疲れているときや、長時間同じ姿勢をとったあとは、左右差を感じやすくなることもあります。その日の体の状態を知る目安としても、左右の比較は役に立ちます。
体の声に耳を傾ける習慣は、左右差だけでなく、体のさまざまな変化に早く気づくことにもつながります。
よくある質問
Q. 骨盤のゆがみが原因ですか?
左右差には、筋肉の使い方、柔軟性、生活習慣などさまざまな要因が関わっています。気になる場合は、専門家に体を見てもらうのもよいでしょう。
Q. やりにくい側だけ練習してもいい?
やりにくい側を少し多めにするのはよいですが、両側を行うことが基本です。片側だけに偏ると、新しい差を生むこともあります。
Q. 左右差はなくなりますか?
完全になくなることを目標にせず、体が楽に感じられるか、動きやすくなったかを目安にしてください。
Q. 利き手側ばかり使ってしまいます。
利き手を使うのは自然なことです。すべてを反対の手で行う必要はありませんが、歯みがきやドアの開け閉めなど、簡単な動作をときどき反対の手で行ってみると、体の使い方のバランスを意識するきっかけになります。
まとめ:左右差は「気づいて、両側を使う」
- 人の体には、もともとある程度の左右差がある
- 左右差は、荷物の持ち方、立ち方、座り方など生活のくせの記録
- 片脚立ち、肩の高さ、ねじりなどで自分の左右差を知る
- 横向きの脚上げ、ツイスト、片脚ブリッジ、四つ這いで両側を使う
- 完全な左右対称より、差が広がりすぎない習慣を大切にする
今日から、バッグを持つ手を、いつもと反対にしてみてください。少し違和感があるかもしれませんが、その違和感こそが、体のくせに気づくサインです。

